CI/コーポレートアイデンティティー

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むかしむかしあるご時世に、CIブームというものがありました。コーポレートアイデンティティー、つまり「うちはこういう会社なのです」という自己の存在証明を目に見える形にする、という流行です。ある会社は古い屋号や家紋を横文字の企業名やマークにしたり、またある会社は情熱の赤とさわやかな青空をイメージしたコーポレートカラーを設定し、マークやそれに伴うデザインマニュアルを作ったのでした。…莫大なお金を払って。

ひるがえって今現在、とんとCIという言葉は死語になってしまいました。油断するとマークなんてものはパンフレットや名刺を初めて作る際に「ちょっとついでに、それらしいのを作ってよ」で済まされてしまうという、可哀想な扱いにまでなってしまっているのです。
ブームに乗ったデザイナーもまずければ、それでOKを出していた企業も問題でした。本当のCIって、きっとこんなはずではなっかのに。ちゃんと依頼する方もデザイナーの方も真剣勝負で作らなければならなかったはずなのに…。

お天気のよいある日、若手の農家のご夫婦がやってきました。もう彼が大学生の頃からいかに生きることや環境のこと、仕事のことに真剣であるかを知っていましたし、今現在の仕事も変に片寄った考え方に凝り固まることなく、すくすくと農に向き合っている姿を見て来ました。美味しいものが育つすばらしい地面を作れる、頭の良いご夫婦です。
「自分たちが作ったものです、と、一目で分かるマークやデザインが欲しい」という依頼でした。彼と彼女が如何に素敵なのかを知っている私に、さあ、どう作る?と真っ向からやって来られてしまいました。これは逃げられない、そう思いました。

口先だけで誤魔化してしまえるデザイナーではいけない、そんなご時世になりました。分かる人が見ても、何の先入観を持たない人が見ても、道ばたに落ちていても存在感があるデザインでなければ作る意味がないのです。
お金という対価を頂きながらCIをデザインするということは、“デザイナー自身のCI”を問われるということでもあるような気がします。

そんな真剣で楽しい打ち合わせは、お日さまの当たる縁側で、というこの素敵なシチュエーション。しっかりとしたCIを持っている彼と彼女の思いを、デザインという目に見える形にする。
頑張らないわけにはいきません。


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2005年03月30日 22:18に掲載された表紙の写真です。

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