半年という時間をしっかりかけて、愛育病院のパンフレットが生まれました。
年間出産数1,200以上という大きな産婦人科病院から「デザインをして欲しい」と依頼を受け、最初の打ち合わせをした時には正直二の足を踏みました。その時の業務日誌を見ると明らかに顔に「やりたくないな…」と出ていたらしい。今となってはこうして笑って振り返ることが出来るのですが、それくらい「どこに焦点を絞ってデザインして欲しいのか、何も見えない」印象だったのです。つまり、本業のことに邁進するあまり、表面をどう飾りたいかなんて考える人がいない。ブランディングということが一切ない。決済を下ろしてくれる人(責任者)の目指す方向がなかったのです。
でも逆に考えると病院として至極まっとうなことではないか? 1,200という数字がこの病院を物語っているではないか。
では、それだけの数の人(主に女性)が見て「この病院に来てよかったな」とか「ちょっとほっとした」と感じてもらえるようなデザインを、私は提案しなくてはならないのではないか。
「今やらないとダメなんです!」
目の前の企画担当者に言われ、一生懸命に院内で走り回っている先生たちの姿を打ち合わせの向こうに感じながら、「病院の思いを伝えるには、どんなデザインにするべきか」をきちんと企画書とデザインで提示してみよう、と覚悟が決まったのです。
企画書を作るに当たって、私はあえて「自分が女であること」を意識するようにしました。普段の仕事では、常にニュートラルな立ち位置でデザインするようにしているのですが、今回はしっかりと向き合い、そこから病院へのメッセージや希望、逆に病院からの思いを交錯させました。
医療がどんどん高度化するなかで、やはり生身の人間(患者と医者)が互いに持っているべきメッセージを、飾ることなく言葉に置き換え、イラストや写真でビジュアル化しなくては…。
この完成したパンフレットとほぼ同じ状態のダミーを仕上げて、シンプルな企画書を添えてお見せしたところ、「言いたかったことはこれです、このままで進めてください」とGOサイン。
おもいっきり、安堵しました。
後はこつこつと素材を調え、丁寧に仕上げていたら(途中でカラー封筒を作ることになって大幅に時間が割かれた、ということもありますが)半年が経過していました。

12ページの中で施設設備・ハードを紹介するのはわずか2ページ。だってハードを調えておくのはもはや基本、当たり前だからです。でもワンカットはすべて抜かりなく。
カメラマンの斧淵昭洋さんがきちっと撮ってくれました。

病院からのメッセージともいうべきイラストとコピーに、表紙も含めてなんと7ページ。待ち合いには小さな子供さんを連れたお母さんが多く見られたので、空いたところに落書きしてくれたらいいな、と思って。コピーもゆっくり読んで欲しかったからです。
このキャラクター犬は「いつも近くにいてくれそうな感じで」と、大寺聡さんにお願いしました。
「こんな病院だったらいいな」という女性の気持ちと、「こんな思いで私たちは医療に携わっているんだな」という病院側の思いの再認識を繋げられれば、とても嬉しく思います。この四角い12ページのパンフレットを間にして、暖かなコミュニケーションデザインが生まれることを願っています。

最後に、いつも動いてばかりの4人の先生たち。イスにどっかり座ってるイメージではなかったので、自然とこうなりました。出産や手術が終わった瞬間に「今だっ!」とカメラセットの前に引っ張ってこられて(それくらいお忙しい)、照れながらもたくさんのナイスなポーズ!ありがとうございました!

