デザインで顔を見せる

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「生産者の顔が見える商品づくりを!」というのをよく耳にすると思う。買う人にとって、誰がどのようにして作った商品であるかを知ることは大切で、売る側にとっても「トレーサビリティ」としてきちんと開示していることは、もはや当たり前のこととなっている。

そんなわけで、「顔を見せましょう!」と意気込み真っ正面の8ページミニパンフレットをデザイン・制作することになった。題して「華瀬茶を育てる、川前家の人たち。」
初代のおじいちゃんが持ち帰ったお茶の実から育った80年の茶木が今でもしっかりと残り、その茶葉でお茶を生産している「御茶蔵 華瀬」の三代目、川前康博さんご一家の姿を全部ご紹介。ただし「いかにも。かように頑張ってます!」という空気はナシ。ご夫妻と二人のやんちゃな息子さんのお茶づくりの日々を、淡々と取材してまとめてみました。

お茶畑を親子で散歩したり、お茶に合うお菓子を買いに行ったり、パッケージのスタンプを兄弟で捺すお手伝いをしたり。すべて本当にこの家族で手作りしているからこそ、あえて商品のことだけを熱く語ることは避けました。他のお茶が気合いを込めてやりがちな表現をしてしまったら、この家族には似合わないし、かえって「顔」が見えなくなるのです。

一日がかりの撮影の最後は、木造の工場の中で台車に乗って滑り回る兄弟をお父さんが追っかけて押さえ込みながら。大慌てで撮った中に、一枚だけ全員が満面の笑顔の写真がありました。もうそれは表紙にするしかないような。

ところが、「家族写真を表紙にするのは…どうでしょう…?」と、印刷間際になって川前さんは躊躇気味。
「お茶を買う人が見たいのは立派な茶畑や工場の写真ではなく、うんちくの詰まった文章でもないと思うんです。やっぱりこの家族全員の顔じゃないでしょうか。ちゃんと顔を見せましょう」

5年以上ものあいだ時間をかけて、一つづつパッケージをデザインしたりしながらお付き合いをさせて頂いている川前さんご一家は、文句なしに顔を出して欲しい生産者さん。でもこんな人に限って、自らが写真に出ることにテレるものなのです。ということで、最後はぐうっと背中を押させて頂きました。

川前家の笑顔を表紙にしたパンフレットを同封して、お茶はこれから都会へと旅立ちます。

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御茶蔵 華瀬 川前康博
取材・文 中野亜紀
撮影・編集・デザイン アールエイチ・プラス


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2007年02月05日 19:50に掲載された表紙の写真です。

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