授業はじまる

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私が現在講師をしているS高校は、鹿児島県立の中で唯一美術科のあるところ。北向きにとられた広い部屋に100を超えるイーゼルがひしめき合う光景を初めてみた時には、ものすごいところだな、とただただ驚いた。海外滞在留学経験のある実力派の担任が学年ごとにつき、さらに各選択科目に応じて講師が担当する。油絵1名、陶芸2名、日本画2名、彫刻1名、彫塑1名、コンピュータグラフィックス1名、映像1名、そして私も含めてヴィジュアルデザイン2名。内外で大活躍中の各分野での実力者が勢揃いなのだ(私はまだまだ若手のぺーぺーですが)。

このS高校が創立間もない頃、私は現役高校生。“ものすごい高校が出来たらしい”と評判だった。絵を描くこと自体が授業で認められている高校があるなんて!夢のような話だった。そしてその実力は夏期講習などでも見せつけられ、お互いに切磋琢磨していける恵まれた環境を羨ましく思ったものだ。
デッサンの上手い人の近くにいるだけで自分の力も引き上げられる。鉛筆の角度、紙を走る音、腕の動き、描く時の佇まいなど、いい絵を描く人はその姿までもが美しい。同じ場所にいなければ分からない雰囲気を味わい、そして、もっともっと上手くなりたいと真剣に願い一生懸命になることでしか、力はつかないのだ。実際美大に一浪している間、このS高校の卒業生二人と同じ空間でデッサンをし続ける機会を得たのだが、そのお陰で私は受験を突破出来たのだと思う。

それから後、講師という形でS高校へやって来ることが決まった時、「教員免許も持たない私がこの高校に行くなんて!」と驚いたと同時に、「お礼をこの後輩たちにするつもりで授業をしよう」と心に決めた。紆余曲折を経て今の私になり、また、今まさに現場でデザインをしているからこその生の話を伝えたい。デザインをするということ、生きるということ、学ぶということ、自分らしく自分で生きてゆく方法のヒントを話していきたい。

大人のようでいて世間知らずのまだまだ子供…かつての自分の姿を恥ずかしく見ながら、また新学期が始まる。


鹿児島・グラフィックデザイ|広告ディレクション